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A MOST WANTED MAN(邦題:誰よりも狙われた男)※ネタバレあります

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新宿武蔵野館にて「誰よりも狙われた男」を観た。

この映画を見るべき理由が3つあった。
フィリップ・シーモア・ホフマンが主演ということ、
原作がジョン・ル・カレということ、
アントン・コービンの監督作品ということ。
そのなかでも最大の理由は
今年2月2日に自ら命を絶ったといっても
過言ではない結末を迎えたフィリップ・シーモア・ホフマンの
最後の主演作品だったからだ。

ドイツの諜報機関の仕事を描いた本格サスペンス。

前作「ラスト・ターゲット」で孤高の男を描いたコービンが
この作品でも悩める組織の長の《孤独》を描き切った。

以前その年のベストに挙げていた「裏切りのサーカス」の原作者ル・カレは
この作品でもまたまた非情な《裏切り》の社会を我々に見せつけた。

この作品はひと言でいうと「徒労」の映画。
ラストでホフマン演じるギュンター・バッハマンは作戦が失敗に終わり
大きく肩を落として独り車に乗り込み走り出す。
現場にこれまで率て来た部下たちを残して、
自らの危険を顧みず尽くしてくれた協力者たちを置き去りにして。

しばらく車を走らせた後、彼はおもむろに車を止めて車外へ。
カメラ(観客)をも車の中に置き去りにして彼は
「彼の場所」へと去って行った。
そこで画面はエンドクレジット・・・。
流れるクレジットを眺めながら観客たちは
この作品を撮り終えた後、役者がたどった不幸を知っているがゆえに
さらに大きな徒労感を受けることになる。

映画体験としては奇跡的な領域に達していると震えた。



by teruiso | 2014-11-07 01:24 | 観た映画
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